7 「観心本尊抄」と「佐渡始顕本尊」

 

「観心本尊抄」の本尊相貌を明かした文と、「佐渡始顕本尊」の相貌座配(「日亨本尊鑑」P6・「日蓮聖人真蹟の世界・上」P60)とを比較してみましょう。

 

 

(本尊抄)

「其の本尊の為体、本師の娑婆の上に宝塔空に居し」

(佐渡始顕)

首題 自署花押

 

(本尊抄)

「塔中の妙法蓮華経の左右に釈迦牟尼仏・多宝仏」

(佐渡始顕)

・仏界

南無釈迦牟尼仏 南無多宝仏

 

(本尊抄)

「釈尊の脇士上行等の四菩薩」

(佐渡始顕)

・本化菩薩

南無上行菩薩 南無無辺行菩薩 南無浄行菩薩 南無安立行菩薩

 

(本尊抄)

「文殊・弥勒等は四菩薩の眷属として末座に居し迹化・他方の大小の諸菩薩は万民の大地に処して雲閣月卿を見るが如く」

(佐渡始顕)

・迹化菩薩

南無文殊弥勒等

・声聞界

南無舎利弗等声聞

・天界

南無釈提桓因等 南無大梵天王等 南無大日天等 南無大月天等

・人界

南無四輪王

・修羅

南無阿修羅王等

・鬼神

南無鬼子母神 

[十羅刹女]南無藍婆 南無毘藍婆 南無曲歯 南無花歯 南無黒歯 南無多髪 

無無厭足 南無持瓔珞 南無皇諦 南無奪一切精気

・国神

南無天照八幡等

・伝法祖師

南無天台大師 南無伝教大師

・陣

不動明王 愛染明王 南無持国天王 南無増長天王 南無広目天王 南無毘沙門天王

 

(本尊抄)

「十方の諸仏は大地の上に処したまふ。迹仏迹土を表する故なり」

(佐渡始顕)

・仏界

南無分身等諸仏 南無善徳等諸仏

 

 

以上、「観心本尊抄」「佐渡始顕本尊」を並べると、見事なほどに合致しています。

このように、佐渡始顕本尊の相貌・勧請の列衆からも、「観心本尊抄」に示された「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す」の本尊、「彼の因果の功徳を譲り与へたま」へる本尊、「一閻浮提第一の本尊、此の国に立つべし」の一つの意を顕した本尊、仏が「末代幼稚の頸に懸けさしめたまふ」本尊といえるのではないでしょうか。

 

ただし、注意せねばならないのは、佐渡始顕本尊は日蓮の一生を画する「特別な思い入れのある本尊」ではあっても、「特別な法義的な位置付け、意義付けをされた本尊」ではないであろうということです。更に付言すれば、「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す」「彼の因果の功徳を譲り与へたまふ」「一閻浮提第一の本尊、此の国に立つべし」「末代幼稚の頸に懸けさしめたまふ」という教示は、特定の本尊を指向したものではなく教理的な解説というべきものですから、そこに示されその意を込められた本尊は日蓮が図顕した全ての曼荼羅であり、それを念頭に置かれての教示であると考えています。

 

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