5 身延草庵での曼荼羅・万年救護本尊

身延の草庵での曼荼羅を考える時、まず授与書きの有るものは除かれるのですが、やはり注目すべきは文永11(1274)12月の万年救護本尊でしょう。讃文では曼荼羅は即「大本尊」であると明確にし、自身は「上行菩薩」であることを示しており、これは他の曼荼羅讃文には見られないものです。

 

このような「上行菩薩であることを示し、かつ大本尊の三文字に末法の教主たる自身の境地を含ませた曼荼羅本尊」であれば、それは拝する弟子檀越を通して世に向かって宣言をしたものともいえ、身延の草庵に奉掲されていたのではないでしょうか。

 

 

逆に、このような「自らの内観世界を明かした宣言ともいうべき讃文」を記した曼荼羅を、明らかにせず秘蔵する等は考えづらいものがあります。もちろん前述したように、奉掲の態様は様々であったとは思いますが。

 

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